新型コロナウィルスが蔓延中のイタリアから。
私はイタリアで個人事業をしています。内容は、日本人の観光客のために、美術館やレストラン、公共交通機関の予約を代行するというもの。
言わずもがな、今回のコロナウィルスの影響で、観光業は壊滅状態。私の事業も大赤字であります。
私は、このコロナウィルス騒動をもって、今の事業を終了しようと思います。
実は、コロナウィルス以前から、現在の仕事に疑問を持っていました。というのも、設立当時の12年前に比べると、お客様の質が低下し、無理難題を押し付ける方、無断でキャンセルする方、代金を払わない方が非常に増えたためです。
残念ながら「お客様は神様だ」という考えの方が、日本人には非常に多い。
ありがたいことに、この12年でお客様の数は増え、最近はイタリアの平均的な月収を得られるほどになりました。けれど、人並みの収入を得るには、それだけの時間を費やさないといけないということで、私は一日の大半を仕事に費やしてきました。
その間の私は、家の仕事、美味しい食事を用意することや、子供と過ごす時間をおろそかにしていました。
そしてふと思ったのです。一日の大半を、心ない人のために費やすよりは、自分の大切な家族のために、夫や子供のために費やす方が正しいのではないか?と。
そう思うが早いか、コロナウィルスの流行が起こりました。神様は私に、仕事をやめるきっかけを与えてくれたのです。
今、2月後半以降のキャンセル処理に追われています。ほとんどのお客様が、1円でも多く返金を希望されています。
美術館に支払った入場料については、美術館から返金がない限り、私はどうすることも出来ないので、それでも返金を希望の方には、私がいただいた手数料を全額返金しています。
私は予約を取りましたので、私の仕事の正当な報酬として、手数料を受け取る権利があり、それを返却する義務はありません。これは、多少頭を働かせていただければ理解できることと思います。
でも、人はお金が欲しい。
お金に執着している人がどれほど多いか、コロナウィルスの非常事態は人間の本性をよく見せてくれます。
私もかつては執着していました。代金を払わない人に対して、腹わた煮え繰り返る思いをしたものです。
しかしながら、神様は私のお金への執着をなくしてくれました。
今は、「金がほしいか、そらやるぞ」という気持ちです。
この仕事を辞めれば、すっかり貧乏になるでしょう。でも神様はきっと必要なものを与えてくださる。そう信じて、良妻賢母に励みます!
イタリア封鎖から約3週間。コロナさえなければ、家族みんなが家にいる穏やかな日々です。お菓子を作り、子供の宿題を見て、家事をして。外出しなくても、何もしなくても、人は幸せに生きられるものだと知りました。
お金がなくても、家族が健康で、仲良く一緒に過ごせることがいちばんの幸せです。
お金の執着を捨てて、心配事を一つ減らして、心穏やかに、幸せに暮らしましょう。
そういうわけで、仕事やーめたっ!