今日も私の翻訳したパスカルの本から、パスカルの思想を紹介するよ!
真実を言うことは、言われる相手にとっては有益であるが、言う人にとっては不利益になる。なぜなら、真実を言う者は憎まれるからである。
こうした不幸は、当然のことながら上流社会において顕著である。だが、一般庶民であっても、この不幸から逃がれることはできない。なぜなら、社会的地位に関係なく、他人から良く思われることは、常に何かしらの利益をもたらすからだ。そうして、私たちの人生はまやかしの連続となる。人々は互いにだまし、互いを立てることしかしない。私たちがいない時に話すことを、私たちの眼前で言う人は誰もいない。結局、人間同士の結びつきなど、このだまし合いの上に築かれたものでしかない。
したがって人間は、自分自身に対しても、他人に対しても、嘘をつき、ごまかし、善人ぶっているだけに過ぎないのだ。人間は、他人が自分に本当のことを言うのを喜ばないし、他人に本当のことを言うのも避ける。このように、正義と理性からかけ離れた人間の性質は、私たちの心のなかに生まれながらに根ざしているのである。
パスカル『パンセ』100