私の父親は浪費家でした。たぶん今もそうだと思います…。
子供の頃、母親はよくお金のことで嘆いていました。
「お父さんが生活費を入れてくれない」「うちはお金がない」など…。
そして私だけに、マイナスの預金通帳を見せたり、父親がサラ金からお金を借りていることを話したりしました(なぜか兄には家のダークな部分を見せようとしない母…)。
通帳がマイナス表示になるということは、定期預金にお金が入っているからで、本当にお金がなかったらマイナスの通帳にはならないのですが、そんな事実を知る由もない小学校低学年の私は、「うちは貧乏なんだ、ものすごくお金に困っているんだ」と思い、「家計の負担になってはいけない、親にものをねだってはいけない」と勝手に思い込むようになりました。
今も、親にものをねだることはありませんし、親に何かを買ってもらったり、食事代を支払ってもらったり、お金をもらったりすることにはすごく抵抗があります…。
父親は、たまに家にいるとき、兄と私をよく本屋に連れて行ってくれました。母親はその時いつも家に残って、一緒に来ることはありませんでした。今思うと、本当に家族4人で出かけるということが少なく、ほとんど記憶にありません。
さて、本屋で父は必ず好きな本を1冊買ってくれました。とは言っても、本当に欲しい本が1,000円を超えるような高いものはお願いできず、大抵マンガの単行本1冊(当時360円くらい)を買ってもらっていました。兄は母からの「お金ない」洗脳を受けていなかったので、値段は気にせず、欲しいものを躊躇なく買ってもらっていました。
本屋では父も本を買うのですが、さすが浪費家の父は、毎回3冊から5冊、小説やら経済本やら語学本やら、興味の赴くままに買っていましたね(それで読まずに本棚の肥やしになるものも多かったですね)。その性格は兄にも受け継がれて、兄はやたらと本を買います。自分への投資を惜しまない、自分の趣味や洋服にお金を使う人になりました。
小学生の頃、なぜか休日に私と父だけ家にいる、というシチュエーションになりました。私は父親とコミュニケーションを取るのが非常に苦手なので、とても気まずかったのを覚えています。父は私を連れてゴルフの打ちっ放しに行ったのですが、何も話すことがなく、退屈して待っていました。おそらく父に飲み物とかスナックとか欲しいか聞かれたと思うのですが、父に何かしてもらうことに慣れなさすぎて、何も頼むことが出来ませんでした。帰り道、本や雑貨を置いている私の好きな店に寄りました。そこには私の欲しかったぬいぐるみがあって、お店に行くたびに、まだ売れてないかのチェックをしていました。そして私はそのぬいぐるみを何気なく父親に見せました。すると父親は即そのぬいぐるみを買ってくれました。本当なら(普通の子供なら?)嬉しくて大喜びするところでしょうが、私は「え、お母さんの承諾も得ずにこんなに高いもの買って大丈夫なの?」「怒られない?」「お父さんにお金を使わせて申し訳ない」とか、そんなことばかり考えていました。素直に喜べない子供…。たぶん小学校4年生くらいの出来事だったと思います。
そしてそのぬいぐるみも、本当に好きだったのか、実は疑問です。そのぬいぐるみは、母とそのお店に行った時に見つけました。おそらく母が見つけて、母が「かわいい」と言ったのだと思います。私は、母が気に入ったぬいぐるみなら買ってもらえるかもしれない、という期待から、そのぬいぐるみを欲しいと思うようになったのかもしれません。
なぜなら、母が気に入らなければ、いくら私の好きなものでも、決して買ってもらえないということを、当時の私はしっかり理解していたので。
ぬいぐるみは好きでしたが、どのぬいぐるみを買うかはいつも母が決めていました。大学生になって、バイトをして、自分の好きなぬいぐるみを買った時は、なんだかすごく自由になった気がして嬉しかったですね。
話が逸れましたが、父はそんな感じで、お財布にお金があれば、あるだけ使ってしまう人でした。見栄っ張りなので、服や持ち物にお金をかけたり、高級車を買ったり…。高給取りだったはずですが、家計はいつも火の車で、そういうわけでクリスマスも誕生日も、まともにプレゼントをしてもらった記憶がないのかもしれません。
そして、娘の私は母から経済状況を聞かされていたので、我慢は常に私の役割でした。兄には家計が苦しいことなど微塵も悟らせず、好きなだけ勉強に必要なものを買い与え、塾にも通わせてもらっていましたし、浪人も留年(就職先が気に入らないからもう一度チャレンジしたいという理由)も許され、仕事を辞めて資格取得のために通った予備校代も払ってもらっていました。
私はというと、そういうものは一切なく、浪人は絶対にできないと釘を刺され、大学在学中に「留学したい」と言ってみたこともありますが一蹴され、卒業と同時に就職、就職してからは親から一切の金銭的援助を得ず、今まで生きています…。それが気楽でいいんですけどね…。親に頼ると、後で見返りを要求されそうで怖い…。そういう思考回路は毒親育ちあるあるかも知れません。