私の夫は2019年の11月19日からお酒を飲んでいません。
それまでは毎日ウォッカを一瓶開けていました。
11月18日に何があったのかお話しします。
この日、私たちは冷蔵庫を買いに電化製品のお店へ行きました。
イタリアはいたるところにBAR(バール)というコーヒーやお酒、軽食が取れる場所があり、人が集まる商業施設には必ずあるのですが、夫は買い物の最中もそこでお酒を飲んでいたようです(というか、いつものパターン)。
買い物を終えて店を出ようとしたとき、雨が降り出しました。冷蔵庫以外に買った電化製品があり、夫は「荷物を(自分が)運ぶから、車を入り口まで持ってきて」と言いました。こういう別行動を申し出る時は、たいてい酒を飲みたい時なのですが、おそらく買い物後、また一人でBARで酒を飲んでいたのに違いありません…。
そして私は車を入り口近くに寄せたのですが、いつまでたっても夫が出てきません。しばらくして夫から電話がかかってきました。夫は怒鳴り声で「どこにいるんだ!どれだけ待たせるんだ!」と言います。しかし入り口に夫の姿はありません。聞けば、夫は違う入り口で待っている模様…。酔っ払って、どの入り口から入ったのか覚えておらず、入ってきた入り口の見分けもつかなくなっていたのです。
私は夫が待っている入り口まで車を移動させ、夫を拾ったのですが、その時夫に、理不尽な怒りをぶちまけられ、暴言を吐かれました。
そして冷静に思ったのです。
「もうダメだ、こりゃ」と。
それまでもかなり限界に達していて、当時の私は別居について真剣に考えていました。アルコール依存症から脱出させるには見捨てることも必要(何もかも失って、どん底を見させないといけない)、という話もかなりあったので、一旦捨てるしかないのかな?と。
そこで、子供と3人で暮らせるアパートや、手頃な価格で買える中古車(夫名義の車を持っていくと発狂した夫にいちゃもんをつけられそうだったので)を真面目に探して、別居するための具体的な計画を立てていました。
その日、お店から帰って、夕食の最中もグダグダと私や子供を貶めるような発言を繰り返すので、私は冷静沈着に
「もう無理です。あなたがお酒を飲み続けるのなら、私は子供と一緒にこの家を出て行きます。アパートと車も何とかなりそうなので、手続きができ次第出て行きます。以上」
と言いました。
次の日の午前中、夫からメッセージがあり、「たぶん俺が出ていく方がいい」とありました。私は返信しませんでした。どうせそんなこと言って、絶対出ていかないんだから、私たちがさっさと出て行こう、と考えていました。
その日の夜、仕事から帰ってきた夫が言いました。「一番良い解決法は、酒をやめることだと思う」と。
その日から夫はお酒を飲んでいません。
当時のことを夫と振り返り、夫は、「あのとき私の言ったことが断酒のきっかけではない」と言います。私と話しをした後、長女(当時9歳)が「お父さん、お酒飲まないで」と言ったからだ、と。
長女が夫に「何でお酒飲むの?」「お酒飲んで欲しくない」と言うことは、それまでにも何度かありました。しかしその時は全く聞く耳を持ちませんでした。
だからやはり神様の業と思います。あのとき神様が、夫の耳と目を開いてくれたのだと。
もちろん、夫の「お酒をやめる」という発言をそのまま素直に信じることはできず、その後半年くらいはハラハラしながら過ごしました。
しょっちゅう夫が再飲酒に陥る夢を見て、号泣して目が覚めて、あぁ夢でよかった…。ということが何度もありました。
クリスマスやお正月のイベントを避け…。とにかく夫にお酒を見せるのが怖かったです。
夫が断酒をして、私は「新・良妻賢母のすすめ」を実行することを頑張りました。
そうこうするうちにイタリアはコロナでロックダウンになり、約2ヶ月半ずっと家族4人で過ごすことになりました。コロナで世界は恐怖に陥っていましたが、この時期の我が家はとても平穏で、夫への信頼を大きく回復することができました。
アルコール依存症の人の目を覚ますには、脅しではなく、具体的に計画を立て、すぐに実行に移せる段階で「愛を持って一旦突き放す」ことをお勧めします。